暗くなった街で、あかりを灯す|停電の日に太陽光発電ができること

台風が過ぎた朝、大雪の夜、大きな地震の直後。電気が止まった経験は、多くの人が一度は持っているのではないでしょうか。数時間で復旧することもあれば、数日にわたることもあります。そんなとき、屋根の上の太陽光発電はどう振る舞うのか。日常の設備が非常時にどんな顔を見せるのかを、落ち着いて整理しておきたいと思います。

電気が止まった日、屋根の上はどうなるか

意外に思われるかもしれませんが、停電が起きると、太陽光発電システムは基本的にいったん停止します。空が晴れていても、屋根の上のパネルが光を受けていてもです。

これは故障ではなく、安全のための設計です。送電網が停止しているときに各家庭から電気が流れ込むと、復旧作業にあたる人が危険にさらされてしまいます。そのため、停電を検知したシステムは自動的に系統から切り離される仕組みになっています。

つまり「太陽光発電があるから停電時も普段どおり」というわけではありません。ここを正しく理解しておくことが、非常時に慌てないための第一歩になります。

非常時に太陽光発電ができること、できないこと

では、停電時にはまったく使えないのかというと、そうではありません。多くのシステムには、非常時のための切り替え機能が備わっています。

自立運転という仕組み

停電時に手動で切り替えることで、発電した電気を専用のコンセントから直接使えるようにする機能があります。一般に自立運転と呼ばれるものです。

使える電力には上限があり、一般的には1,500W程度が目安とされています。家じゅうの家電を同時に動かすことはできませんが、スマートフォンの充電、照明、テレビによる情報収集、扇風機、冷蔵庫の一時的な稼働といった用途には十分に応えてくれます。停電の中で、情報と連絡手段と冷蔵庫を確保できることの価値は、実際に経験してみると想像以上に大きいものです。

切り替えの操作方法は機器によって異なります。パワーコンディショナのスイッチを操作するもの、専用コンセントの位置が屋内外で異なるものなど、家ごとに違いがあります。

夜と天候という、避けられない制約

自立運転はあくまで「その場で発電している電気」を使う仕組みです。したがって、日が沈めば使えません。曇天や降雨の日には、使える電力も不安定になります。

また、自立運転中は電力の供給が安定しない場面もあります。雲がかかって発電量が急に落ちれば、接続していた機器が止まることもあり得ます。精密機器や医療機器を常時つなぎ続ける前提で考えるのは避けたほうが無難です。

災害は、必ずしも晴れた昼間に起きるわけではありません。台風による停電はむしろ悪天候とセットですし、夜間に始まる停電も珍しくない。この制約を知っておくことが、過度な期待も過度な不安も避けることにつながります。

「備え」を、日常の延長に置く

非常時に役立つかどうかは、設備の性能だけでは決まりません。使う人が準備できているかどうかで、結果は大きく変わります。

晴れた日に、一度試しておく

もっとも効果的な備えは、停電が起きていない平時に、自立運転への切り替えを一度実際にやってみることです。

取扱説明書を引っ張り出し、専用コンセントの場所を確認し、実際にスマートフォンを充電してみる。三十分もあれば終わる作業ですが、この経験があるかないかで、非常時の落ち着き方はまるで違います。説明書は玄関の収納など、暗がりでも取り出せる場所にまとめておくとより安心です。

蓄電池を組み合わせるという考え方

昼につくった電気を、夜に持ち越したい。この願いに応えるのが蓄電池という選択肢です。日中に蓄えた電気を夜間に使えるようになれば、停電時の「夜」という最大の弱点を補えます。

停電の翌日も晴れていれば、日中に発電しながら蓄え、夜にまた使うという循環が生まれます。数日単位の停電に対しても、最低限の暮らしを続けられる可能性が高まります。もちろん容量には限りがあるため、何をどこまで動かすかという設計は必要です。

使える電気を、何に振り向けるか

自立運転で使える電力には上限があります。だからこそ、何を動かすかという判断が重要になります。

情報を得る手段、連絡を取る手段、食料を守る手段。この三つは、多くの家庭で優先度が高くなるはずです。スマートフォンの充電、ラジオやテレビ、そして冷蔵庫。逆に、消費電力の大きい調理家電や暖房機器を同時に動かそうとすれば、すぐに上限に達してしまいます。

どの家電がどれくらいの電力を使うのかは、本体や説明書の表示で確認できます。平時のうちに主要な家電の消費電力を把握しておくと、非常時の判断が早くなります。紙にメモして、説明書と一緒に置いておくくらいで十分です。

家族で、優先順位を決めておく

限られた電力をどう配分するか。これは技術の問題ではなく、話し合いの問題です。

冷蔵庫を優先するのか、照明を優先するのか。小さな子どもや高齢の家族がいるなら、何を最優先にすべきか。停電が起きてから考えるより、平時に一度話しておくほうが、はるかに良い判断ができます。この会話自体が、家庭の防災計画になっていきます。

日常の設備が、非常時の安心になる

太陽光発電は、防災のためだけに設置する設備ではありません。ふだんは日々の電気をまかない、光熱費と向き合うための、あくまで日常の装置です。

けれど電気が止まった日、屋根の上でつくられた電気で手元のあかりが灯り、スマートフォンの画面がつく。その静かな心強さは、他ではなかなか代えがたいものがあります。毎日を支える設備が、いざというときにも寄り添ってくれる。太陽光発電の魅力のひとつは、たしかにそこにあります。