「太陽光発電なら、夏がいちばん発電するのだろう」。多くの人がそう考えます。日差しが強く、日も長い季節ですから、当然の想像です。ところが実際の発電量を一年分並べてみると、その予想は少しだけ裏切られます。太陽光発電には、四季それぞれの表情があるのです。
「真夏が一番発電する」とは限らない理由
太陽電池は、光を電気に変える装置です。同時に、熱に弱いという性質も持っています。パネルの温度が上がると変換効率がわずかに下がり、その低下は一般に、基準となる温度から1℃上がるごとに数百分の一という単位で積み重なっていきます。
真夏の屋根の上は、想像以上の高温になります。気温が35℃の日でも、直射日光を浴び続けるパネルの表面温度はそれをはるかに上回ります。つまり夏は「光の量は最大級だが、パネルにとっての条件は必ずしも最良ではない」季節なのです。
加えて、日本の夏には梅雨と台風があります。日照時間そのものが読みにくい月が挟まるため、月単位の発電量で見ると、夏が年間の頂点になるとは限らなくなります。
春・夏・秋・冬、それぞれの発電の顔
一年を通して眺めると、季節ごとにまったく違う個性が見えてきます。
春:光と気温のバランスがもっとも良い季節
多くの地域で、年間の発電量が高くなりやすいのが春です。日射量は十分に増えているのに、気温はまだ穏やか。パネルにとっては理想に近い環境が整います。
日も長くなり、大気の状態も安定しやすい時期です。発電量のモニターを眺めていて「今年はよく発電しているな」と感じるのは、春先から初夏にかけてであることが少なくありません。ただし花粉や黄砂が舞う時期でもあり、パネル表面の汚れが気になる季節でもあります。
夏:日は長いが、条件は複雑
日の出から日の入りまでの時間は一年でもっとも長く、発電できる時間帯そのものは最大になります。一日の発電量が伸びる日も当然あります。
一方で、前述した高温の影響と、梅雨・台風・夕立といった天候の変動が重なります。晴れた日の伸びと曇天の日の落ち込みの差が大きく、月全体でならすと期待ほど突出しない、というのが夏の実像です。ただし、電気を多く使う季節でもあるため、発電した電気を自宅で使い切りやすいという別のメリットがあります。
秋:安定した空が続く落ち着いた季節
秋は、気温が下がってパネルの条件が改善し、大気も澄んで光が届きやすくなる季節です。台風が去った後の秋晴れは、発電にとって非常に良い条件がそろいます。
ただし、日照時間は日ごとに短くなっていきます。一日あたりの発電の山は高くても、山の幅が狭くなっていく。それが秋の特徴です。秋雨前線が居座る時期もあり、月によって差が出やすい季節でもあります。
冬:気温は味方、しかし太陽が低い
冬は、パネルにとって温度条件がもっとも良い季節です。よく晴れた冬の日の昼間、一時的に高い発電を記録することは珍しくありません。
ただし太陽の高度が低く、日照時間も短いため、一日の合計では夏に及びません。日本海側では雪や曇天が続く地域もあり、地域差がもっとも大きく出る季節でもあります。逆に太平洋側の冬は晴天が多く、思ったより発電するという声もよく聞かれます。
一年を通して見るという発想
季節ごとの違いを知ると、太陽光発電との付き合い方が少し変わります。
地域によって、季節の顔ぶれは入れ替わる
ここまで挙げた四季の特徴は、あくまで一般的な傾向です。実際には、住んでいる地域によって季節の重みはかなり変わります。
冬に晴天が続く太平洋側と、雪雲に覆われる日本海側とでは、同じ「冬」でもまるで違う季節になります。梅雨のない北海道では、夏の位置づけも本州とは異なります。気象庁が公開している地域ごとの日照時間や日射量のデータを一度眺めてみると、自分の土地における季節の並び方が見えてきます。カタログの平均値より、自分の地域の実測値のほうが、はるかに参考になります。
月ごとの増減に一喜一憂しない
太陽光発電は、月単位で見ると必ず波があります。梅雨のひと月だけを取り出して「今年は失敗だった」と判断するのは、桜の咲かない冬に庭を掘り返すようなものです。
年間の合計、あるいは前年の同じ月との比較。この二つの見方を持っておくと、発電量の数字が落ち着いて読めるようになります。数年分のデータがたまると、自分の家の「平年並み」が見えてきます。
季節ごとに、電気の使い方も変わる
発電の波と同じくらい、消費の波も季節で動きます。夏は冷房、冬は暖房と給湯。よく発電する季節と、よく電気を使う季節は、必ずしも一致しません。
だからこそ、季節ごとに使い方を切り替える発想が生きてきます。日射の強い季節は昼の家事を増やし、日照の短い季節は夜の使い方を見直す。設備は同じでも、暮らし方が季節に応じて変われば、一年を通した手応えは大きく変わっていきます。
積雪と落ち葉、季節が持ち込むもの
季節が運んでくるのは、光や気温だけではありません。春の花粉、初夏の黄砂、秋の落ち葉、冬の雪。パネルの表面に何が積もるかも、季節とともに変わります。
多くは雨で流れ落ちますが、積雪の多い地域では雪が滑り落ちるまで発電が止まることもあります。落ち葉が特定の場所に溜まりやすい環境なら、その影響が続くこともあるでしょう。屋根の上は普段目に入らない場所だからこそ、季節の変わり目に一度意識を向けてみる。定期的な点検を受けているなら、そのタイミングで様子を聞いてみるのもよい方法です。
季節をまたいで、光と付き合う
太陽光発電のある暮らしは、一年という単位で完成します。春の伸びやかさ、夏の激しさ、秋の安定、冬の澄んだ強さ。それぞれの季節に、それぞれの発電の顔があります。
屋根の上の設備を通して、季節の移ろいを数字で感じ取れるようになる。それは光熱費という話とは別の、ささやかで確かな豊かさなのかもしれません。