太陽光発電を検討するとき、多くの人が真っ先に気にするのが天気のことです。「うちの地域は曇りが多いから」「雨の日は電気が止まってしまうのでは」。もっともな心配に思えますが、実際の発電の仕組みを知ると、天気との関係はもう少し柔らかいものだとわかります。
「曇ったら発電ゼロ」ではない
まず押さえておきたいのは、太陽光パネルは直射日光がなければ動かない装置ではない、ということです。パネルが反応しているのは「太陽そのもの」ではなく「そこに届いている光」です。
曇りの日に外へ出て、傘なしで本が読めることを考えてみてください。空全体がぼんやりと明るいのは、雲の中で散らばった光が地表まで届いているからです。パネルはその光にも反応します。晴天時と比べれば発電量は大きく下がりますが、ゼロにはなりません。
雨の日でも同じです。昼間であれば、控えめではあるものの発電は続いています。完全に発電が止まるのは、光そのものが届かない夜だけだと考えてよいでしょう。
天気と発電量の関係を分解する
天気と発電の関係は、いくつかの要素に分けて考えると理解しやすくなります。
散乱光という、もうひとつの光
地表に届く太陽の光は、大きく二つに分けられます。太陽から一直線に届く「直達光」と、大気中の水蒸気や雲、塵に当たって方々へ散らばった「散乱光」です。
快晴の日は直達光が主役ですが、雲が広がると直達光が遮られ、代わりに散乱光の割合が高まります。散乱光は直達光ほど強くありませんが、空全体から降り注ぐという特徴を持っています。曇りの日でも発電が続くのは、この散乱光のおかげです。
雲の種類と厚さで、結果は大きく変わる
同じ「曇り」でも、発電量は一様ではありません。空を薄く覆う雲と、雨を降らせるような分厚い雲とでは、通過してくる光の量がまったく違います。
薄雲がかかった程度なら、発電量の落ち込みは限定的です。反対に、昼間でも照明が必要になるほど暗い空では、発電量はかなり下がります。天気予報の「曇り」というひと言の中に、実はかなりの幅があるということです。
面白いのは、雲の切れ間から日が差した瞬間です。雲の縁で反射した光が加わることで、快晴時を一時的に上回る発電を記録することがあります。空模様は、それほど単純ではありません。
雨がもたらす、思わぬ効果
雨は、発電にとって悪いことばかりではありません。パネルの表面に積もった砂埃や花粉、鳥のふんといった汚れを、雨が洗い流してくれるからです。
多くの住宅用パネルは傾斜をつけて設置されているため、雨水が自然に流れ落ちる構造になっています。しばらく晴天が続いた後の雨上がりに、発電量がすっきり回復したように見えることがあるのは、このためです。雨の日そのものは発電が少なくても、翌日以降の働きを整えてくれている、という見方もできます。
天気予報の見方が、少し変わる
太陽光発電のある暮らしを始めると、天気予報との付き合い方が変わってきます。
「日照時間」という指標に目が向く
晴れ・曇り・雨といったマークは、その日の代表的な空模様を示したものにすぎません。発電量とより強く結びつくのは、実際に日が差した時間を表す日照時間や、単位面積あたりに届いたエネルギーを示す日射量です。
気象庁の観測データでは、地域ごとの日照時間を確認できます。自分が住む地域が年間を通してどれくらい日を浴びているのかを知っておくと、発電量の見通しがぐっと現実的になります。「曇りが多い気がする」という感覚と、実際の数値は案外ずれているものです。
「晴れ」の中にも幅がある
天気予報を気にするようになると、晴れという表示の中にも幅があることに気づきます。空が抜けるように青い日と、うっすら霞がかかった日とでは、届く光の量が違うからです。
春先の霞んだ晴天、夏の湿気を含んだ空、秋の澄み切った青空。同じ晴れマークでも、発電量には差が出ます。空気の透明度という、ふだんはあまり意識しない要素が数字として表れる。これは太陽光発電を持ってはじめて気づく感覚かもしれません。
一日ではなく、一週間で眺める
雨が続いた三日間だけを見れば、発電量は寂しい数字になります。けれど、そこに晴天が二日入るだけで、週の合計はまるで違って見えます。
天気は日単位で大きく振れますが、週や月といった単位でならすと、意外なほど安定します。発電量を見るときも同じ感覚が役に立ちます。一日ごとの数字に振り回されず、少し引いた時間の幅で眺める。そのほうが、実態に近い姿が見えてきます。
天気の悪い日ほど、暮らし方が効いてくる
発電量が少ない日は、電力会社から買う電気の割合が増えます。だからこそ、そういう日ほど使い方の工夫が生きてきます。
雨の日は無理に昼へ家事を寄せず、いつもどおりに過ごす。反対に、久しぶりの晴天には洗濯や掃除をまとめて片づける。天気に合わせて予定を寄せるという発想は、太陽光発電を導入した家庭で自然と身につくものです。空模様に振り回されるのではなく、空模様に合わせて動く。そう捉え直すと、天気の悪い日への構え方も変わってきます。
どんな空にも、それなりの一日がある
太陽光発電は、快晴の日にだけ意味を持つ設備ではありません。薄曇りの日には薄曇りなりの、雨の日には雨の日なりの発電が、静かに積み重なっています。
そして雨は、翌日の発電を助ける準備をしてくれてもいます。空を見上げて一喜一憂するより、一年を通して降り注ぐ光の総量に目を向けること。天気とうまく付き合うコツは、そのあたりにあるのかもしれません。